干物ハニーと冷酷ダーリン
夢を見た。
それは、あたしが高校生の時の懐かしい記憶。
あたしに好きな人が出来た。
それがあたしの初恋。
それは苦くて切なくて悲しいあたしの初恋だった。
ああ、そうだ。
この時からあたしは、恋をすることをやめたんだ。
この時から、恋愛に臆病になってしまったんだ。
いつしかそれは、あたしの中で面倒だと思うようになってしまったんだ。
誰かを傷付けるくらいなら、
誰かに傷付けられるくらいなら、
そんなもの、しない方がよっぽど楽だ。
ピーンポーン___
ピンポーン__
ピンポンッピピピッピンポーン__。
ウルサイ。ウルサイ。
今は、無理です。無理無理無理。出れません。
ピリリリリリ。
ピリリリリリリリリリリ。
ごめんなさい、ごめんなさい、すみません。
電話も今出れません。
あたし、風邪引いてるみたいで熱があるんです。察して下さい。お願いします。
ドンドンドン!
ドンドンドンドンドンドンッ!
あーもー!しつこい!
何なの?こっちは病だぞ、こんちくしょー!!
これで、セールスとかだったらぶっ飛ばす!
「……はい、どちら様で?」
備え付けのドアフォンで確認する。
『………俺』
俺?
今どき、ドアフォンでオレオレ詐欺かよ。
馬鹿じゃないの?姿が丸見えだっての。
「……詐欺なら間に合ってます」
一刻も早くそこから立ち去れ。
あー、頭痛い。だるっ。
『……開けろ』
…………………………?
何だろう。
この妙に聞き慣れた声に見慣れた姿。
目を擦り、じっとモニターを見る。
夢か?これはまだ夢の中ですか?