干物ハニーと冷酷ダーリン
思ってはいても、実際には言えず。
これも仕事のうちなんだろうなぁっと、旅館を説明する女将さんに、ほぉー。だの、へぇー。だの相槌を打つ。
最後に、お世話になります。なんて口添えをする。
社会人として、大人な対応は出来る方だ。
そして、また1人お茶を啜る。
静かで程よく空調の効いた空間。
陽当たりも抜群。これは、絶好の昼寝日よりではないだろうか。
今日の旅行の為に、1週間ほど徹夜でなおのこと睡魔が襲う。
抗うこともないので、あたしは素直に眠りに落ちていった。
「……っとさん!川本さん!……川本さん!!」
目を開けると、そこには高橋さんが声を張り上げていた。
「……どうしたの?」
「どうしたの?じゃないですよ!いつまで寝てるんですか!温泉行きましょうよ」
ものの数分、眠っていた感覚だったけど高橋さんの反応からしてそうではないらしい。
窓の外もうっすら陰っていた。
もう夕方になっていたのである。
昼寝にしては、長すぎた。