干物ハニーと冷酷ダーリン
「…?何ですかこれ」
『水だ』
「…水?………あぁ、はい」
川本は、キョロキョロ辺りを見渡し立ち上がると千鳥足であろうことか焼酎の瓶を持ってきた。
グラスの中に投入。
そして、飲む。
そういうことではない。
誰が焼酎の水割りを飲めと言った。
「水城さんは、水割りですか?烏龍茶?それとも緑茶ですか?」
『……俺はいい』
「んー。じゃあ、水割りにしときます」
どうぞ。と、一対一で割られた水割りを俺に寄越す川本は、完全に酒に飲まれていた。
人の話も聞いちゃいない。
これは撤収だ。
黒崎にもそう伝えると、各自逃げるように宴会場を出ていった。
おい、こいつどうすんだよ。
高橋にでも引っ張ってってもらおうと思ったら、そこには既に姿がなかった。
『おい、川本。終わりだ。部屋に戻れ』
「んー?もうですか?せっかく楽しくなってきたんですよー?」
『お前は飲み過ぎだ』
「大丈夫ですよー。たまにはいいじゃないですかー。せっかくの旅行なんですよ?まぁ、本当は行きたくなかったんですけどね?」
『えっ?川本、旅行やだったの?温泉嫌いだったっけ?』
新たに水を持ってきた黒崎は、川本の持っている水割りを奪い取って、水だけのグラスを握らせる。