干物ハニーと冷酷ダーリン
「これ、描き直しを提案した方がいいんじゃないですか?」
『言ったよ、再三言ったさ俺だって。なのにあのバカ娘はちっとも聞く耳持ちやしねーんだ』
「いや、でもこれは、壊滅的にボツですよ?新人作家さんでもこれはないですよ」
『おー。だからさー俺、今から行ってくるわ。押し掛け上等だわ、こんちくしょー』
「はっ?えっ、今何時だと思ってるんですか!」
と、言っているうちに、黒崎さんは鞄に仕事道具を詰め込んで慌ただしく出ていった。
まじか。まじなのか。
後で警察から電話がきたらどうしよう。
時間も時間だし、不審者と間違えられなきゃいいけど。
非常識な時間に相手は女の子だ。
あたしが久留米先生のアパートに行くのとは訳が違う。
「あのー、水城さん。黒崎さん大丈夫でしょうか?」
恐る恐る、あたしたちの会話にノータッチだった水城さんに尋ねる。
『……放っとけ。無理矢理にでも描かせるのも編集者の仕事だ』
無表情でよくもまぁ、そんな恐ろしい事を。
ひょへー。と気の抜けた返事をしてしまったあたしに何故か水城さんの眼光が飛んできた。