干物ハニーと冷酷ダーリン
あー、まあそうですよね。
あんなの漫画の世界だから、成功するんであって現実問題難しいですよね。
全員が全員、俺の事好きだとでも思ってるんでしょうか。
だったら、かなり痛々しいですよ。
まだ、黒崎さんの方がマシです。
世界で黒崎さんと相崎さんしかいなくて、どっちかを選ばないと死ぬって言われたら断然黒崎さんを選びます。
なんて、一緒になってあたしもディスってやった。
嫌だった事は、溜め込むと良くないから全部吐いちゃいなって、途中から黒崎さんが煽り始めるから、拍車がかかった。
大の大人が仕事もしないで、かれこれ30分くらいディスり続けた。
今日、初対面だったのに。話したのなんて何分となかったのに、端から見たら大人げないと思われるかもだけど、それだけパンチの強い曲者だったという事だ。
「そう言えば、原稿貰えたんですか?」
一通り言いまくって妙にすっきりした頭で、まだ仕事が残っていた事を思い出した。
『あー、うん。あのバカ娘。もう1つネームがあったんだ』
「描き溜めしてたんですか?」
『みたいだねー。乗り込んでったら、血相変えて出してきたよ』
鈴村先生も予期せぬ訪問だったらしく、まさか黒崎さんがこんな時間には来ないものだと油断していたらしい。
黒崎さんが何て言って原稿をもぎ取ってきたのかは聞かなかったけど、撤収間際に
「こんな時間に来るなんて、黒崎さん彼女いないんですね!」
と、お見舞いされたらしい。
今日1日で、あたしも黒崎さんも3日分のエネルギーを消費した。
日中は、バタバタと動きまわりお客さまの前ではニコニコ。
まるで白鳥になった気分だった。
人に見られる所では、優雅に平然としているが、水面下では、バタバタと足を動かしもがいている。
馴れない事なので疲れるのは当たり前なのだが、そこに追い討ちをかけたのは紛れもなく相崎さん。