干物ハニーと冷酷ダーリン
もう2度と会うことがないという事がせめてもの救いとなった。
あたしも黒崎さんも、そろそろ帰ろうと水城さんのデスクを見ると、いつの間にかその姿が消えていた。
「あれ?水城さん、どこ行きました?トイレですかね?」
『いや、あれ見なよ』
指差す方を見ると、入り口の壁に掛かっている日程表のホワイトボードの退社欄に水城さんのマグネットがくっついていた。
「帰ったんですか!?」
『みたいだねー。いつから居なかったんだろ』
「全然気付きませんでしたね」
二人で戸締まりの確認をして、電気を落とし編集部を出た。
うっすらと明るくなりかけている空の下、あたし達はやっと帰宅する事ができたのであった。