干物ハニーと冷酷ダーリン
「おはよーございまーす」
伸びに伸びきった腑抜けた挨拶を交わしながらデスクに着き隣を見るとまだ黒崎さんは出勤していなかった。
もしやっ!と思いあのホワイトボードを見ると、黒崎さんの欄に半休と書かれていた。
やりやがった。あたしを出し抜いて1人半休を取ってやがった。
共に戦い抜いた戦友だと思ってたのに。
がっかりだ。
特別黒崎さんが悪いってわけではないけど、腹いせに黒崎さんのスマホに電話をかけてやった。ついでに通話無料アプリでメッセージを送りまくった。
既読にはならなかったけど、恨みは伝わるはずだ。
『うわっ。川本、昨日徹夜組じゃなかったっけ?普通に出勤してきたのか?すげぇな』
何やら大量の資料を持っていた三野さんがあたしを見るなり驚いた顔をしていた。
「えぇ、まぁ。あたしまだ若いので睡眠時間が少なくても起きれるんですよ」
若いを少し強調して強がってみた。
『いや、それもう年じゃね?寝続けるだけの体力がないからすぐ起きるってうちのじーちゃん言ってたぞ』
慰めのつもりか、肩をポンッと叩くと三野さんは自分のデスクに戻っていった。
完全に墓穴を掘った。
若いを強調するなら、寝なくても大丈夫だと言うべきところだった。
あたしの脳細胞は、まだ完全に目覚めていないらしい。