干物ハニーと冷酷ダーリン
『おーい。川本!』
半ボケ状態ながも、高橋さんに読者様のアンケートハガキの集計の仕方を教えていると、編集部の入り口で大平さんが呼んでいた。
「どうしたんですか?」
大平さんは、少し複雑そうな顔をして、
『昨日の書店の相崎さんから電話があって、、、』
歯切れの悪さからして、嫌な予感がしてならない。
そもそも、書店からの連絡なら誰が掛けてこようが営業部で事は収まるのに、編集部に来る事がおかしい。
それも、編集長の水城さんではなく、あたしに伝えに来る事が不自然っちゃ不自然だ。
『川本のデスクの直電を教えて欲しいって、、、、』
「教えたんですか!!」
『仕事の話ならうちが聞くって言ったんだけど、プライベートな話って言うから……』
「教えたんですか!!!」
『いや、流石に私用で会社の電話を使うのはまずいだろ?そう言ったら何も言わずに切れた』
大平さんが、まともな人で良かった。
おいそれと教えようもんなら、営業部に乗り込んで長谷川部長の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らすところだった。
「大平さん、もしまたそういう事があったら絶対に教えないで下さい」
『……なんか、あったのか?』
事情も知らない人に、お願いだけするのも厚かましいので、昨日の事を大まかに説明した。