干物ハニーと冷酷ダーリン



『川本のせいで俺まで説教された』


「黒崎さんの、ヘタクソな鼻歌のせいですよ。あれで気付かれたんです」


『バカ言え、誰もが聞き惚れるほど上手だっただろーが』


「歌い手さんに謝って下さい。それに途中のベンベンベンって何ですか?ベースですか?ベーシストの方にも謝って下さい」



『なに聞いてたんだよ。あれはどう聞いても三味線でしょーよ』



黒崎さんは、三味線と思われるメロディーを再び奏で出した所で、水城さんの雷が落っこちた。


口添えとばかりに、黒崎さんの下手な鼻歌で仕事が手につきませんと、ちょろっと言ったら雷があたしにまで落っこちた。



あまりにも、水城さんを怒らせてしまったらしいあたし達は、編集部からも追い出されてしまい渋々休憩所へと足を運んだ。



『何だよ水城、超こぇーじゃん。カルシウム足りないんじゃん?牛乳でも買ってこうか』


「黒崎さん、また怒られたいんですか?」


『………止めとくか。今のあいつに無闇に近付くと次は出版社から追い出されそうだな』



黒崎さんと二人、椅子に座り缶コーヒーを飲みながら比較的穏やかに過ごしてしまった小一時間。


あれ?あたし、お昼食べてないじゃん。

それに気付いた途端に、盛大に鳴り出した腹の虫。




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