干物ハニーと冷酷ダーリン
『……わかりました。今日の所は諦めます』
なんだろなぁ。
この、打たれ強い性格。
あんなにも言ってやったのに、まだ笑顔を崩さず、さらには微笑みまで披露してくれちゃって。
「あの!ホントにすみませんが、今後こういう事は止めてください」
『、、、それは迷惑だからですか?』
「迷惑というか、苦手なんです。仕事終わりとか休日とかは1人の時間が欲しいというか、自由に過ごしたいといいますか、、、」
『もちろん、川本さんの時間を邪魔するつもりはないんです。ただ、気が向いたらでいいんです。それでも駄目ですか?』
「気は向かないと思いますけど」
『…………分かりました。帰ります。これ以上嫌われたくもないので』
ここにきて、少し寂しげな表情を浮かべた相崎さんは背中を向けてスタスタと遠ざかって行った。
1人ぽつんと残されたあたしの頭はハテナマークが満載していた。
帰ってくれたのは、心の底から嬉しいのだが、最後の"これ以上嫌われたくもないので"ってナニ?
嫌うも何もありませんけど?
これ以上ってどっからの事いってんの?
なに以上なの?
恋愛経験の乏しいあたしにはさっぱりで、黒崎さんあたりにでも聞いてみようかと思ったが、面倒な事になりそうなので止めておこう。