干物ハニーと冷酷ダーリン
「……はい?川本です」
スマホの液晶画面の光が目にしみる。
眩しくて画面を見れないまま電話に出てみる。
『川本、休んでる時に悪いなぁ。寝てたよなぁー?』
案の定、黒崎さんだった。
「…ええ、まぁ。普通はそうですよねぇ。、、、で?何かあったんですか?」
目覚まし時計を手繰り寄せ目を凝らして時間を確認すると、午前1時を過ぎた頃。
『いや、まぁー。うん、、、、そのー』
「何ですか?用件がないなら切りますよ?」
『待って待って!言うから!、、、、川本今から出版社に来れないかなぁってさー』
「………嫌です」
『うん、分かるよ。徹夜明けに普通に出勤して限界だって事は俺にも痛いくらいに分かるよ。でもさ、川本。大変なんだよ!』
弱々しく話す黒崎さんだったけと、最後の方は半分自棄になったかのように声を荒げた。
この男、情緒不安定である。
危ない、非常に危ない。
「あのー、黒崎さん。まず落ち着いて下さい。全く本筋が伝わってこないのですが?何が大変何ですか?」
『そんな悠長な事、言ってらんないよ!泣いてんの!もう号泣してんの!手がつけらんないくらいに泣いてんの!』
「…………、誰がです?」
『高橋さんだよ』
「はっ?高橋さん?……何故?」
『話は後でするから、頼む!早く来てくれ!お願い!!』
返事をする前に切られたスマホを呆然と眺める。
見慣れた待ち受け画面には可愛い子犬の画像。
その子犬の目を見ながら考える。