干物ハニーと冷酷ダーリン

転げる



【黒崎side】



正直、俺はびびってる。

目の前で女の子がこんな号泣している場面はそうお目にかからないからだ。

俺の36年間の人生で、女の子の涙を見たのは数知れず。
だけど、ここまでの号泣は見た事がない。

故にどうする事も出来ないし、どうすればいいのかも皆目検討もつかない。

よって、今しがた戦友とも言える心の友だと俺が勝手に思ってる川本にSOSの電話をした。



だがしかし。

川本がどんなに急いで来てくれるとはいえ、少なからず時間はかかる訳で、この状況をどうにかせねばならぬ。




編集部には、鬼の形相をしてキーボードを叩きつけている水城。

休憩スペースには、号泣中の高橋。

その間で、右往左往している俺。






『お、おい。水城………高橋、号泣だぞ?』



編集部の入り口にへばりついて二人の動向を見守れる位置を確保している俺は、ちらっと水城に顔を向ける。



『………聞こえてる』



『あのままでいいのかよ?』


『放っておけ。そのうち帰るだろ』



と、言うても水城さん。

号泣ですよ、号泣。女の子が号泣。

鬼には、慈悲の心はないのですか?







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