干物ハニーと冷酷ダーリン
バシンッ!と、デスクに叩きつける長谷川部長の手のひらの下には何やら数枚のプリント用紙。
あー、また誰かがやらかしたのか、営業の予想を反して増版がかかったのか……。
さぁー、どっち!
用紙に目を通す水城を見る限り、前者の方だ。
眉間のシワが一段と深く一瞬にして刻まれた。
ああ、さようなら。俺の何の変哲もない日常の徹夜。
俺は一体この後、誰に連絡を入れたらいいのでしょう。
滝か、それとも富井か。
まさかの三野?
短期決戦を望むなら、川本か。
ここは、編集部の平穏な日常をかけて川本がいいなぁ。
川本なら、怒鳴られ慣れてるし編集部事態にそれほど影響はこないはずだ。
川本だ。川本こい。川本、川本。お願い川本!
お前がやらかしていてくれ。
『……黒崎、高橋に連絡しろ』
『……へ?』
『…高橋だ。高橋を呼び出せ』
聞き間違いだと思って一度は惚けてみたけど、耳は正常だった。
水城と長谷川部長がギャンギャンと吠えている中、俺はデスクの電話で高橋にコールをかける。
なに?何?何!
何で高橋なの?まだ研修中だよ?なんで営業が出てきたのさ!
日付を跨ごうとしているこの時間帯。
すんなり、高橋が電話に出るなんて事もなく、俺はひたすらリダイアル。