干物ハニーと冷酷ダーリン


リストアップを営業部に上げるまではよかった。
だが、その後に言われた事を高橋は水城にいい忘れたのだ。


長谷川部長は、外回りに出ていてその足で書店まで行ったのはいいが、約束時間に水城は現れず連絡の取れないまま打ち合わせが始まってしまった。


リストアップしたものは、営業部が販売部数や売り上げを叩きだし、話が通っているものだと思い水城のデスクに置かれていて、それを持って行く役割も水城になっていた。



何も知らない水城は、今の今までその事は一切知らされていなかった。

出先から戻ってきたのも、高橋が帰ってきた後で編集部に残っていた編集者も全くその事を知らないもんだから誰も何も言わなかった。


そして、水城も来ない資料も手元にない長谷川部長はどうにかこうにか打ち合わせを明日にと頭を下げまくったらしい。



『クソッ!そのせいで、一気にパーだ!もぎ取ってきたエリアも他の出版社と配置換えだ!どうしてくれんだ!!』



『うるせぇ。ピーピー喚くな。販売エリアが小さくなっでも在庫を持たせればいいだろうが!』



『そういう問題じゃねぇんだよ!第一、こうなって在庫を持たせるのも簡単じゃねぇんだぞ!』


『それがてめぇらの仕事だろ。働け』



と、高橋が来るまでこんな調子で水城と長谷川部長の言い争いが続き、落ち着きを見せると思いきや尚ヒートアップするものだから高橋が到着しても小一時間二人のバトルは続いていた。



長谷川部長も長谷川部長だが、水城も水城だ。
明らかに、うちの失態だろうというのに、、、多分水城もそう思っているのに何だろう、この微妙な空気。


うちも悪いけど、そちらは?

えっ、うちだけ悪いの?それはないでしょ、そっちもなかなかしてくれちゃってるけど、それは棚にでもあげておくおつもりですか?


と、言わんばかりの水城の対応には感服した。




水城がそんなんだから、標的が高橋に変わり長谷川部長はここぞとばかりに吠えまくった結果。


高橋、号泣。


長谷川部長、退却。


追い討ちをかけるように、水城の止めの一発。



『泣くだけなら、誰にでも出来る。それしか出来ないなら、さっさと帰れ。仕事の邪魔だ』




やだ、もう、なに!
水城くん、怖い!!俺ちょっとチビっちゃうかと思った。




まぁまぁまぁまぁ、なんてちょっと落ち着こうと高橋を休憩スペースに連れてきたはいいけど、俺じゃ無理!ってなって、川本に連絡した次第であります。




早く、早く来て。川本!
もしかして、今以上に川本を恋しいと思った事はないかもしれない。






< 225 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop