干物ハニーと冷酷ダーリン
【川本side】
己の運動不足を実感する。
あたし、根っからの引きこもりだった事を忘れていた。
やれば出来る子だって過信してた。
足がプルプルしてる。
少しの段差ですら一苦労だ。
編集部にたどり着いた頃には、満身創痍。
呼吸が苦しい。
息って、どうやって吸ってどうやって吐くんだっけ?
鼻から吸うの?口から吸うの?
分からない。
『おー!川本!やっと来たか!!待ちに待ってたぞ、俺は!』
「ちょ、ちょっと、、、待って、下さい、、、黒崎さん」
ガクブルしている足が限界で、近くにあった椅子にすがり付く。
『そんな悠長にしてらんないの!ほら、休憩スペースに高橋いるから行って行って!』
「いや、待って下さい。その前に何があったんですか?」
休憩スペースあたりで泣き声がするので、それが高橋さんだって事は分かっている。
だけど、その理由がさっぱりだ。
すると、黒崎はポリポリと頬のあたりを掻く素振りを見せて事の真相を話始めた。
「…………それは、やっちまいましたね。しかも営業、、それも長谷川部長ですもんね。そりゃあ、泣いちゃいますよ。あたしだって泣き喚いちゃいます」
『そうだろ?それに加え水城だもん。鬼だって逃げ出すだろ』
「ですね。あたしなら辞めます。そしてダンテ出版社から出てる本は買いません」
話を聞いただけで、胃痛が。今にも吐血しそう。
手汗が尋常じゃない。