干物ハニーと冷酷ダーリン


『……お前、すげぇな。長谷川に謝罪させるとか』


「いえ、水城さん。あなたにも言ってるんですが」


さも、他人事のようにしれっと傍観者を気取っている水城さんは反省もへったくれもない。



『は?俺?』


「無自覚とは恐れ入ります。もし、水城さんのせいで高橋さんが辞めちゃったらどうしてくれるんですか!過去にしでかした過ちの数々をお忘れですか!」


『、、、うるせぇな。んな時間に吠えるな阿呆』


「なっ!あーもー嫌だ、、、。冷酷非道にも程がある。高橋さんもう行こう。この人ちょっとおかしいんだ」


『何だと?』


終始、呆然と立ち尽くしていたであろう高橋さんの手を取って歩き出す。

後ろは振り向かない。

だって、怖いんだもん。
きっと今水城さんの顔でも見ようものなら、1週間は悪夢にうなされる。
それだけは避けたい。



「あ、あの。川本さん、、、いいんですか?」


「あー、、、うん。多分大丈夫」


「すみません。私のせいで川本さんにも迷惑をかけてしまって……」


「えっ、いや。あたしは大丈夫だよ。それより高橋さん!」



後ろを歩く高橋さんの肩を振り向きざまに掴む。


「っはい!」


「辞めないでね!失敗は誰もがする事だし、あたしなんてもっと凄い事やらかしたことあるくらいだから、今日の事は気にしなくていいからね!また一緒に頑張ろう!」



やっと男だらけでむさ苦しい編集部に入った女の子。
みすみす水城さんの心ない言動で逃してなるものか。

黒崎さんのモチベーションも駄々下がりだ。
今はそんな事、どうでもいいけど。




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