干物ハニーと冷酷ダーリン




『………水城って、川本好きだったの?』


右見て左見て、おまけに前後の確認。

そして手を口に添えて何故か小声。



36歳、立派な大人です。無駄に大声を出してオーバーリアクションはしません。
周りに迷惑をかける事はしません。
それが、どんなに驚いたとしても。




『……そういう事になるよなぁ』


『なに、その煮え切らない感じ。いくら水城とはいえ、そんな中途半端なら川本は渡せない』


『別にお前のでもねぇだろ』


『いんや!川本は俺の大事な戦友だ。共に苦難を乗り気ってきた心の友だ。本気じゃねぇなら手を出すな』



川本が編集部にきて6年。

初めは手の掛かる新人が入って来たもんだと思ってた。
そして、どうせすぐに辞めるだろうと。

でも川本は違った。

泣いた時も、倒れた時も、一度たりとも辞めたいとは言わなかった。

そんな川本を見て、俺はいつしか川本を妹のように思っていた。

こんな事、川本に知れたら1週間………いや、1ヶ月は口をきいてくれないだろうけど。


だからこそ、川本の些細な変化にも気付く事が出来ると思うし力になりたいとも思う。

川本が極端に恋だの愛だのを遠ざけてる事も何となく分かる。相崎への反応を見る限りでもそうなんだと思う。

深くは聞かないし、川本も自分で話したりはしない。
けど、過去にトラウマになってるものがある。
俺はそう思ってる。


水城は気付いてるのかも知れないけど、そこに踏み切ろうとしているからには、中途半端にして川本を傷付けないで欲しい。





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