干物ハニーと冷酷ダーリン
『……お前さ、俺のタイプの女、知ってるだろ?』
『上品で気配りが出来て仕事の邪魔をしないってやつ?そう言えば、水城の歴代の彼女ってそんな感じだったよなー。川本と真逆ですけど?』
『だよな。そうだよな』
『なら、止めろよ』
『俺も勘違いなんじゃないかと思った。けど、そう思えば思う程、気になるんだアイツの事』
『ふーん。本気なんだ』
『じゃなきゃ、お前にこんな話するか』
『そうだねぇ。ましてや川本だもんね。冗談でこんな話、出来るわけないもんねー』
『言っておくが、そう自覚したのは随分前だ』
『えっ?ウソ!俺とした事が!全然気付かなかったー』
『まぁ、まだ言うつもりはなかった』
小さく呟く水城は、テーブルに肘をついてその左手に顔を預けて視線を下に向けていた。
『いつまで片思いするつもりだったんだよ』
珍しく項垂れている同僚に、少しばかり同情もする。
なんせ、あの川本が相手だ。
一筋縄ではいかないのは目に見えている。
『あの男、、、相崎が現れて焦った……川本がアイツのことどう思ってんのか分かりきってたんだけどな』
あら、やだやだ。
哀愁漂わせてる色男がここに1人。
もー、勘弁して欲しい。
この人も、何年編集長してんのさー。
これこそ、降格もんじゃない?その座、俺もらうよ?
『あのさー、恋ってそんなもんなんじゃない?』
36歳、ミルキー編集部敏腕編集長 水城禅。
そんな水城の想い人、川本かなで。26歳。
そして多分、川本が最近不自然だったのは水城が原因。
なんだよ、ちくしょー。
青い春を謳歌する歳でもねぇだろ。
そんなの高校生で終わらせておけよー。
なんだよ、この甘酸っぱい感じ。
楽しそうじゃねーか。
【黒崎side END】