干物ハニーと冷酷ダーリン
昼間とは違い、人通りの少なくなった街並み。
街灯の光とお店から漏れ出す灯りの中、あたしは居るかもわからない彼を待つ。
当然、表のシャッターは閉まっているが、その中からは微かに光が漏れている。
まだ、誰かは残っている。
その人かどうかはわからないけど、あたしは待った。
『………川本さん?』
足元にあった石ころをコロコロ転がしていると、視界の端に映り込む爪先。
「あっ、相崎さん。………お疲れ様です」
顔をあげると、予想した通り驚いた表情を見せる相崎さん。
『………どうしたんですか?』
「相崎さんに会いにきました」
今更、何のようだ。と罵られるかもしれない。
あの時のあたしのように、何も言わずに立ち去られるかもしれない。
それでも、あたしは伝えなくちゃいけない。
だから、ここに来たんだ。
相崎さんは、すっと視線を外しあたしに背中を向けて歩き出す。
ここで逃げてはいけない。
その後を追うように一歩踏み出せば、目の前を歩く相崎さんは少し立ち止まる。
『場所を変えましょう』
そう言うとまた歩き出し、あたしはその後を何も言わずにただついて行く。