干物ハニーと冷酷ダーリン
『いやいやいや、ちょっと待ちなさいよ!俺と一応上司よ?』
「いや、あの、ですから挨拶は済ませたつもりですけど?それに今はプライベートですよ。あたしはあたしの好きなことをします」
レジで店員さんがあたふたしているので、手早く会計を済ましコッペパン片手に店内から出る。
後ろからは黒崎さんが文句を垂らしながら着いてくる。
何この人、何も買わずに出てきちゃったの?
大人として失格だ。
立ち読み反対!出版社社員なら本を買え!
『ちょっと何?川本、機嫌悪いの?生理中?』
ついでに、デリカシーもへったくれもない。
「違います。黒崎さん、早くコンビニ戻って夜食でも買って出版社に戻ったらどうですか?」
スタスタと歩み続けるあたしに、黒崎さんも負けじと着いてくる。
『えー、ちょっとお話しようよー。俺寂しいじゃん。なんなら川本の家に泊まるよ?』
「それは、本当に止めて下さい」
『真顔で言うなよ。傷付くよ俺』
とことん傷付けばいい。
なんて考えてると、本当に家まで着いてきそうだったので、近くの空き地で足を止めた。
あれ?帰らないの?と言う黒崎さんをスルーしてコッペパンを食らう。
うん、美味しい。
『俺ねぇ、さっきまで水城と飲んでたんだー』
水城の言葉に分かりやすく反応してしまったあたし。
コッペパンが、喉に詰まってむせてしまった。