干物ハニーと冷酷ダーリン
『それさー、俺じゃなくて水城に言えば?』
「、、、、、はっ?」
本気でこの人、地中に埋めてもいいだろうか。
ここまで真剣に話してきたあたしが馬鹿じゃないか。
返せあたしの今までのマジトーク。
よっこらせ。とゆっくり立ち上がり背中をポンポンと叩く黒崎さんはまるで老人のようだ。
『いやさー、だからってさ、そんな普段通りを装ってまで水城に気を使わなくてもいいんじゃん?』
「あのー、あたしの話聞いてました?水城の気持ちに気付いてしまって気まずいって言いましたよね?それに多分、水城さんはあたしが気付いた事知らないですよ」
あたしの事を珍獣か馬鹿かアホだと思っているに違いない水城さんは、きっとあたしが気付いたとは思うまい。
『えっ、、、アホじゃん、あの水城が気付かないわけないでしょー』
「……へっ?気付いてるんですか!?」
『気付いてるよ。まぁ、それなのに何も行動に移さない水城も水城なんだけどさ。アイツも戸惑ってんだよ。惚れた女の怯えた顔なんて見たくないだろ、男ならさ。』
川本がそのトラウマとやらから抜け出したいって言うならさ、川本から伝えないと抜け出せない事もあるんじゃない?
不本意ながらも、最後は黒崎さんに大いに背中を押されあたしはまた走り出した。
食べかけのコッペパンを黒崎さんに押し付けて、非常識だと分かっていても、この勢いのまま伝えないとまた尻込みしそうだから。
あたしは走った。
走りに走った。
久留米先生の追い込みに向かう並に爆走した。