干物ハニーと冷酷ダーリン
第8話
風は吹いている
今だかつて1度も足を踏み入れた事のない場所にあたしは立っている。
相崎さんに会いに行った場所をA地点としよう。
あたしの拠点地をB地点とする。
そして今いる場所がC地点のその先D地点だ。
またもや、大通りに出てタクシーを捕まえたあたしはD地点に降り立った。
早い話、水城さんのマンションに来た。
よりにもよって、0時20分を過ぎたこの時間に。
黒崎さんと飲んでいたという水城さんは、今日は帰ると言っていたので部屋にいるのは間違いないと思う。
だけど、この時間だ。どうしたもんかと不審者ばりにマンションの前をウロウロしていた時、スマホが鳴り出した。
画面に写し出された文字には、着信を知らせている通知と【鬼編集長(水城さん)】の文字。
なんというタイミング。
なんか怖い。
なんで?
と、顔をあげるとエントランスからスマホを耳にあてたまま出てこようとしている鬼編集長、、、、水城さん。
そして、目が合う。
スマホからの音が、消える。
これは、逃げるしかないかも知れない。
先ほどまでのノリに乗った勢いは消え失せ、すっかり尻込みモードのあたし。