干物ハニーと冷酷ダーリン
編集部に戻ってきたあたし達は、入稿日に向けて黙々と仕事を進め、時々黒崎さんがすっとんきょうな鼻歌を奏でたばっかりにあたしまで水城にどやされた。
『川本が途中で中途半端なリズムを刻みだすからバレたじゃんか』
「黒崎さんの鼻歌がおかしかったからですよ。途中で変にアレンジしないで下さいよ」
今は資料室にて二人でアンケートハガキの集計。
黒崎さんのせいで、編集部から追いやられたのである。
『俺、今回もデットゾーンなんだけど』
「あたしもですよ」
『高橋はどうしたのさ』
「定時なので帰りましたよ」
ハガキを見てはキーボードを叩きの繰り返し。
単純な作業に見えてこれが一番大変だったりする。
主にダメージが腰と肩と首と目に1度に襲いかかる。
『帰りたい。俺さ風呂に2日入ってないよ』
「2日くらいまだ大丈夫ですよ」
『おっさんの2日はキツいよ、いろいろ』
「まだ大丈夫です2日なら」
こんな会話の出る職業があるだろうか。
こんなのが日常茶飯事すぎて、正常な判断というものを時々忘れるのが編集者である。