干物ハニーと冷酷ダーリン
クレージーガール
【水城 side】
黒崎にいいように丸め込まれ、結果的には喜ばしいのだがどこか腑に落ちないこともない。
川本の中で葛藤があった事は、知っている。
だから焦るつもりもなかったし、ある程度なら待つつもりであった。
だが、川本の突然すぎる告白から1週間。
関係性で言うと恋人同士になれたわけだが、正直そんな事で浮かれている場合でもないのが編集者である。
印刷所からの督促をどうにかこうにかやり過ごし、期日を2日遅らせ無事入稿したのが一時間前の事。
よって部内には至るところに塊が転がっている。
唯一、デスクで仕事をしているのは休み明けだった高橋のみ。
教育係である川本は、自分のデスクの下に沈んでいる。
と、いうかつい今しがた椅子から転げ落ちていった。
黒崎に至ってはトイレの前で力尽きた為、富井と滝が回収しに向かった。
目の前で繰り広げられているそんな状況でさえも、ただ眺めているだけの俺。
とどのつまり、俺自身も他を構っている体力も気力も皆無なのだ。