干物ハニーと冷酷ダーリン
今ならまだかろうじて、家に帰るだけの労力はある。
だが、あとの対処は誰がする?
副編集長である黒崎は役に立たないだろうし、古株である川本もあんな状態だ。
全くもって使える奴がいない。
高橋に後を任せるのはあまりに酷だ。
重たく感じる体をどうにか動かしデスクから立ち上がると営業部へと足を進める。
『………おい、長谷川』
『あ?なんだ?………やべぇ顔だぞ』
『うちの部は、使いもんにならなくなった。急ぎの用がなければ全て明日に回してくれ。動ける奴は新人だけになってんだ』
『…入稿明けか、、、今回は随分とやられたみたいだな』
それに返す言葉もなく、力尽きる前に編集部に戻り帰り支度をする。
いつものパターンで、転がってる奴らも目が覚めれば帰って行くだろう。
入稿日明けは大抵の者は、連休をとる。
俺もそうしたいものだが、まだ仕事が山積みだ。
次の企画もフェアもある。
ちらっと、ちょうちんあんこうのような顔をして寝ている川本を視界に入れ、使い物にならなくなってる指導係の代わりに高橋に今日の仕事内容を振り出版社を後にした。