干物ハニーと冷酷ダーリン
何事だ?
心なしか、半泣きのような声にも聞こえる。
川本にしては珍しい。余程の事があったのか?
『何があった?』
原稿漏れでもあったか?
いや、それは確認した。原稿は全て揃っていたはずだ。
印刷所でトラブル?
今月号が発行出来なくなったか?
"み、、水が、、、。みず、、、水、、、"
『あ?、、、水?………俺?』
"水城さんじゃないです!……水です!水!ウォーターの方です!"
『ああ?水?それが、どうした』
"水浸しなんです!床上浸水です!"
『は?編集部がか?』
"うちですよ!うち!"
『ああ、お前のうちか、、、』
出版社に舞い戻ろうと、慌ててカバンを掴み靴を履いたところでその動きを止める。
"ちょっ!安堵してる場合じゃないですよ。水浸しなんです!あたしどうしたらいいんですか!何もかもビショビショなんですよ!"
『、、、それは大変だな。配管でも破裂したか』
仕事に関しての問題ではなかったため、再びソファーに戻り煙草に火をつける。
"配管だか破裂だか知らないですよ!帰って来たら水浸しになってたんですよ!もーやだー。お腹空いたし、眠いし、眠いし、眠いし、、、布団も水に犯されて、、、あたしどこで寝ればいいんですか、、、"
結局のところ、川本はただ眠りにつきたいだけなのだと分かる。
まぁ、入稿明けだし分からなくもないが、、、実際はそんな事を言っている場合でもない気がする。