干物ハニーと冷酷ダーリン
きっちりスーツを身に纏い、なに食わぬ顔で運転する水城さんを横目で見る。
この人、お腹空かないのか?
あー、もしかして緊張しちゃってるの?
なんて、冷やかそうもんなら後が怖いので何も言わないでおいた。
だがしかし、あたしのお腹事情も緊急を要している。
絶対に聞こえているだろうお腹の音が気にならないのですか?
無惨にも通りすぎていくコンビニたち。
たぶん、そういう事なのだろう。
この男、あたしに飯を食わせないつもりだ。
車は次第に高速に乗りついにコンビニが無くなってしまった。次にあるとすればサービスエリアだ。
そこも通りすぎようものなら、暴れだしてやる。
それまで何もする事がなくなったあたしは暇をもて余しているわけだけど、どうする?
水城さんとお話でもする?
「……水城さん、車持ってたんですね」
交通手段といえば電車だった水城さん。
免許はあるにしても車を所有してるとは思わなかった。
『…作家が逃亡した時、捕まえやすいからな』
「ああ、なるほど」
これは、聞かない方が良かった情報かもしれない。
「疲れたら言って下さいね、あたしも免許持ってるので交代出来ますよー。ペーパーですけど」
なので、サービスエリアに寄りましょうと言う遠回しに訴えてみた。
『まだ死にたくねぇならいい』
ばっさり却下された。