干物ハニーと冷酷ダーリン
呆気にとられていたあたしをよそに水城さんは、躊躇なくインターフォンを鳴らす。
え、待って、まだ心の準備が!
何故かあたしがあたふたしている間に玄関が開き、お母さんがニマニマした表情で出迎えてくれた。
とても何かを言いたそうな顔である。
「あっ、、ただい....」
「あらー!やだー!大変!!イケメンだわ!」
第一声が娘ではなく、娘の言葉に被せ気味に水城さんに食いつく我が母は、どーぞ、どーぞと家の中に招き入れ二階にいるのであろうお父さんを馬鹿デカイ声で呼んでいた。
すみません水城さん。すみません、、、。
リビングのソファーに座るあたしは気が気ではない。
ちらっと横目で見た水城さんは、一点をただずっと見ている。
大丈夫ですか、水城さん。
つんつん、と突っついてみると至って普通に反応するもんだから取り敢えず笑っておいた。
それを見て、は?って顔をしていたから問題はないだろう。普通どおりの水城さんである。
お父さんも揃い、お母さんが飲み物を出し終えいざ本題へと水城さんが話だそうとしたまさにその瞬間、あたしのお腹が盛大に鳴った。
「………すみません、消化が始まりました」
なんで?なんでこのタイミングに!?
瞬間的に見たお父さんの顔がとても残念そうに歪んでいた。
『………こんな娘ですが、どうぞよろしくお願いします』
何を思ったのかお父さんは、めちゃめちゃフライングで水城さんに頭を下げた。
まだ、水城さんは一言も発していないと言うのに。