干物ハニーと冷酷ダーリン
父に丸投げされた水城さんは、苦笑い気味に頷いた。
「そうね。水城さんがいるものね。その時は是非貴方も一緒に来てちょうだいね!待ってるわよ」
川本家の全員が水城さんにおんぶに抱っこ状態で何とか無事に収まりつつある時、お母さんが
でも、その前にかえでが捨てられたらもともこもないのよねー
と、言うものだからお父さんが血相を変えて水城さんの手を握り必死に頼みこんでいた。
『俺からは手放すつもりはありません。次も一緒にお邪魔させていただきます』
そんな事を水城さんはさらりと言ってのけるもんだから、お母さんとお父さんは、わいわいきゃっきゃ状態で盛り上がっていた。
実家を出る時に、お母さんはあれやこれやと持っていけと何かと持たせようとするものだから、そんな大荷物は持っていけないと水城さんキャッスルに送ってもらう事にした。
帰る頃には、空も綺麗な茜色に染まっていて二人でそれを眺めながらなんてロマンチックの欠片も余裕もなく、頼んでいたタクシーで駅に行き慌ただしく電車に乗り込んだ。
「水城さん、何だか色々とすみませんでした」
この数時間の内にあった数々の失態と不躾を思い返すと頭が痛くなるようなものだったと反省。