干物ハニーと冷酷ダーリン


ドクンッドクンッ。
水城さんの脈打つ心臓の音だけが耳に響く。


正直、怖い。


相手の気持ちが分からないってこんなにも怖い事なんだ。

全く漫画の世界とは違う。

ハッピーエンドでは終わらないかもしれない。


行き場のない手をぎゅっと握りしめる。



『こんな女、初めてだわ』


「・・・・」


『部屋は汚えし』


「・・・気力があれば掃除くらい出来ます」


『料理はできねぇし』


「・・・やろうと思えば出来ます」


『ありえない格好で外出るし』


「・・・後藤さんの所だけです」


『品もあったもんじゃねぇ』


「・・・以後、気をつけます。多分」



えっ、なに。
めちゃくちゃディスってくるじゃん。



『俗に言う、干物女って奴に初めて出会った』


「・・・初めまして」


まだ続きます?それ。



『そんな女、好きになる事はまずないな』


「・・・すみません」


まだ続くんだ。



『お前に出会う前まではな』



そう言って水城さんはゆっくりあたしを離し、ぎゅっと握っていたあたしの手を大きな手で包みこんだ。



『かなで、、好きだ』


「・・・・」


『そんなお前に、俺は惚れたんだ』



優しさを含んだその言葉にあたしの涙腺はまた活動を始めて、包みこんでくれている大きな手に落ちていった。



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