干物ハニーと冷酷ダーリン


“また泣くのかよ”と、水城さんは少し笑いながら、そっとぎゅっとまた抱きしめてくれた。

今度は、あたしも水城さんの背中に腕を回して力いっぱい抱きしめた。


ただ嬉しくて。
ただただ幸せで。

さっきと違うのは、この涙が嬉し涙であること。


水城さんの服が涙で濡れるとか鼻水で汚れるとか気にしてられないくらい泣いた。



泣いたら泣いたでめちゃくちゃ頭が痛くなって、報告したら“泣きすぎだろ”って普通に真顔で言われた。


そして、ちゃっかりロンTを着替えた水城さんに思わず少女漫画を押し付けたくなった。



これがリアルなのである。




2度目の洗顔を言い渡され、洗面所に立つあたし。はたまた先程のバスタオルで拭き上げて何食わぬ顔でリビングに戻った。



『寝れるか』


「・・・はい」



本当は全然微塵も眠くないし、むしろ横になると頭痛が増す気がするけど水城さんが就寝モードだったから一緒にベッドに入った。




「そう言えば、さっき名前、、、」


『ん?』


「名前、、、ちょっとドキッとしました」


『お前も言ってみろよ』


「え"っ、、、」


『言ってみろよ』


「・・・ゼ、ン、サン」


『・・早く慣れろよ』


「善処します」


『・・・・』



いや、狙ったわけではないです。
全然とか全部とかはスムーズに言えるんです。
ただ、名前の“禅”となると、、、



へらりと笑っといたら滅多にお目にかからない微笑み返しを打返された。


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