女嫌いと男性恐怖症
第1話 極度の男性恐怖症

 前から人が歩いて来て、その人がよろめいた。
 そのまま音を立て、目の前で崩れ落ちた。

 高崎 晶 (たかさき あきら) 32歳。
 人生32年を生きてきて、自分の前に人が倒れたのは初めてだ。

 咄嗟に歩み寄ったのは、隣にいた直樹 (なおき)。

「大丈夫?」

 直樹が優しく声をかけているのを、ただ見つめた。
 澤田 直樹 (さわだ なおき) 同じく32歳。

 こういうことは、人当たりのいい直樹に任せておけばいい。

 そう思った矢先、倒れた人が手を伸ばし、晶の腕をつかんだ。
 つかまれた晶の元には、むせ返るような甘い匂いがふわっとする。

「うわ……。こいつ女だ」

 晶が眉間にしわを寄せると、つかんだ女らしき人が唸るように声を発した。

「男の人……イヤ……」

 そう言いながら、晶にすがりつく。

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