女嫌いと男性恐怖症
第1話 極度の男性恐怖症
前から人が歩いて来て、その人がよろめいた。
そのまま音を立て、目の前で崩れ落ちた。
高崎 晶 (たかさき あきら) 32歳。
人生32年を生きてきて、自分の前に人が倒れたのは初めてだ。
咄嗟に歩み寄ったのは、隣にいた直樹 (なおき)。
「大丈夫?」
直樹が優しく声をかけているのを、ただ見つめた。
澤田 直樹 (さわだ なおき) 同じく32歳。
こういうことは、人当たりのいい直樹に任せておけばいい。
そう思った矢先、倒れた人が手を伸ばし、晶の腕をつかんだ。
つかまれた晶の元には、むせ返るような甘い匂いがふわっとする。
「うわ……。こいつ女だ」
晶が眉間にしわを寄せると、つかんだ女らしき人が唸るように声を発した。
「男の人……イヤ……」
そう言いながら、晶にすがりつく。
< 1 / 291 >