女嫌いと男性恐怖症
落ち着いてきた遥に、晶は優しく諭すように口を開く。
「昼飯を食べずに、寝ちまっただろ? 何か食べた方がいい」
返事の代わりに、腕をもう一度つかみ直した手は、離したくない気持ちが表れているようだった。
フッと笑うと意地悪く、でも甘やかすような声色で言う。
「食わないとチビのまんまだぞ。大丈夫だ。好物を作ってやる。何かリクエストはないのか?」
頑なに手を離さずに首を振る遥に、ふぅと息をついた。
「あんまりにも、気持ち良さそうに寝てるからなぁ。それを起こせない、俺にも責任があるか」
髪をかき上げて頭をかく間近の晶は、キラキラと星が飛んでいるのかと思えるほどだった。
「きれい」
「あ?」
つい口から出た言葉は、晶を不機嫌にさせた。
グッと黙ってしまった遥に、晶はプッと吹き出す。
「もういいぞ。ハルは気づいてないと思ってるだろうが、今までも言いたそうにしてるのが顔にもろ出てたぞ。言わなくても、言ってるようなもんだ。いい加減、慣れるわ」
苦笑する晶の顔は、優しかった。