女嫌いと男性恐怖症
「きれい過ぎて。どこかに行ってしまいそうで」
何、寝ぼけたことをぬかしてるんだと、晶はまた頭をかく。
そんな晶に遥は、ぽつりぽつりと話し出した。
「おばあちゃんが、いなくなってしまって」
また目から、ポロポロと涙がこぼれた。
そうか。こいつ、ばあさんが亡くなってから、悲しむ暇もなかったのか。
つい腕の中に引き寄せると、ふわっと甘い香りがして、胸がぎゅっとつかまれる感じがした。
やっぱりあの甘い匂いは、こいつからか。
そんな思いが浮かんだが、不思議と突き飛ばして離れたいと思わなかった。
「しっかり悲しんだ方がいい。つらかったんだろう」
「う、うぅ」
チビの遥が、腕の中では余計に小さく感じた。
小さいそれは、胸の中ですすり泣く。
大切な人を大切なまま失った涙は、高等なもののように思えていた。
晶には、そんな経験はない。