女嫌いと男性恐怖症

「ばあさんは、消えたりしないさ。ハルが覚えている限りは、ハルの中に生き続けるだろ?」

 どこかで聞いた受け売りだったが、遥には効果があったようだ。
 泣き止むと、ぎゅっと抱きついた。

 その姿はやっぱり子どもに思えて、さっきの女の甘い匂いは、錯覚だったかと思い直した。

 俺もこいつも、そういうのは持ち合わせないんだ。

「さぁ。もう飯を食べよう」

 立ち上がろうとする晶を、遥はまだ離さなかった。

「なんだ。まだ何かあるのか」

 さすがにうんざりした声が出ても、遥はしがみついたままだ。

 こいつ本当に、今日はどうしたっていうんだ。
 やっぱり、連れ出したのは失敗か。

 そんな思いの晶に、遥は思いがけない言葉を発した。

「アキは、いなくなったりしない、ですか?」

 こいつ。

「俺とばあさんを、一緒にするな。俺はそこまで老いぼれてない。くたばってたまるか」

 無理矢理にソファから離れると、キッチンに向かった。

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