女嫌いと男性恐怖症
遥は、キッチンに立つ晶の後を、追うようについてくる。
こいつ、アヒルのヒナか。
俺は、お前の親じゃねぇ。
そう悪態をつきたいのを、飲み込む。
「料理中は、危ないだろ? そっちに座ってろ」
すぐ側まで来そうな遥に、ダイニングを指差す。
仕方なさそうな顔で、遥は椅子に座った。
「何が食べたい?」
質問しても反応がない。
おいおい。
なんでもいいとか言って、言ってもないが、それで食わなかったら承知しないからな。
遥の返答は期待しないまま、晶は勝手に作り始めた。
甘い匂いが部屋に充満すると、ホカホカと湯気を立てる皿が遥の前に置かれた。
皿の上にあるのは、こんがりと焼けたフレンチトーストだった。
目を丸くした遥が、フレンチトーストと晶を交互に見比べる。
似合わないとでも言いたそうな顔が、バレバレだった。