女嫌いと男性恐怖症

 晶は読みかけだった新聞を持ってくると、上下を確認してダイニングで広げた。

 遥から、姿を隠すように。

「おいしい、です」

 新聞の向こう側の驚いた声に、こっそり微笑んだ。

「アキは、食べないんですか」

「俺はいい。そこまで甘いのは、得意じゃない。昼は適当に食べたしな」

 カタンとフォークが置かれた音に、ったく本当に世話がかかるやつだと、新聞を傍らに置いた。

 どうせ読んでもいなかった。

 沸かしておいたお湯で、新しくコーヒーを淹れるとまた席について、遥の前で飲み始めた。

 近くにいないと食べない気はしていたが、見られてても食べにくいだろうという晶なりの配慮だった。

 やはり、遥は安心したように食べ始めた。

「おばあちゃんは、優しい人でした。アキは少し、おばあちゃんに似ています」

 おいおい。俺はじいさんか、ばあさんなのかと苦々しく思うと、それだから平気なのかと合点がいった。
< 104 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop