女嫌いと男性恐怖症

「例えば、俺とアキは共依存だと思うか?」

「まさか! 気持ち悪いぞ。直樹」

 思わず、呆れた声が出る。

「でも、俺がハワイに移住することが夢だったんだって、言ったらどうする?」

「それは」

「困るだろ? 仕事は? 事務所はどうするんだ? とか」

「まぁ」

 正直、言葉に詰まった。
 直樹がどこかへ行ってしまうなど、考えたことはなかった。

「俺たちは、というか俺は、アキを信頼してる。それは揺るぎない」

「バカ。俺もだ」

 フッと声が漏れる。

 たまに直樹は真っ直ぐに気持ちを言うから、タチが悪い。
 そんな憎まれ口を心の中に浮かべつつも、温かい気持ちになった。

 電話の向こう側で「あぁ、サンキュ」と小さく聞こえた。

「だから、不安や心配を感じない。でも遥ちゃんとは、信頼関係を築いている途中だろ? だからじゃないのか?」

 信頼関係を、築いている途中。
 黙る晶に、直樹は続けた。

「俺が見る限りでは、いい関係だと思う。そんな病的な感じはしなかったぞ」

 そうか。病的。
 確かに病的では、ないんだろうか。
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