女嫌いと男性恐怖症
「誰かを失ったり、不安な時は誰かにすがりたくなるのは、普通じゃないのか? それと共依存とは、別の話だと思うぞ」
「そうか。そうだな。整理できたみたいだ。助かったありがとう」
珍しく素直な晶に、直樹は別のことを思って口を開いた。
「アキ。遥ちゃんにありがとうって、伝えてないだろ」
「は? なぜそういう話になるんだ」
また面倒くさい、直樹が楽しんでるだけだろうと不機嫌な声が出た。
「当たり前のことを、感謝した方がいい。遥ちゃんが不安なら余計だ」
陽菜によく言われるとは、言わないでおいた。
男と女だと、まだ気づかない方がいい。
面倒な2人だ。
しかし、盛大に愉快だった。
「とにかく助かった。ありがとな」
晶はそれだけ言うと、電話は一方的に切られた。
直樹は、スマホを見つめたまま呟いた。
「あいつ遥ちゃんに「ありがとう」なんて言えるのか?」
そう言い終えると、クククッと笑い声が漏れた。