女嫌いと男性恐怖症
片付けが終わると、おずおずと遥がお伺いを立てた。
さすかに、ヘソを曲げ過ぎていたらしい。
「あの。買っていただいたコーヒーのを、開けてみてもいいでしょうか」
昨日買った袋は、寂しそうに部屋の片隅に置かれたままだった。
「ハルに買ったやつだ。好きにしたらいい」
目をキラキラさせて袋を持ってくる遥は、「美味しいコーヒー淹れますね」と、ウキウキしているのが伝わる。
喜ぶ遥に、買って良かったなと晶も満足げに眺めた。
中からは優しいマスターらしく、どう使うのかが書かれた紙が入っていた。
丁寧な字と分かりやすい説明書きは、何枚かに及んでいた。
「えっとこれがドリッパーで、フィルター。わぁ専用のケトルまで」
「口が細いケトルで、お湯を注ぐのも憧れで」と、いちいち感動している遥に、コーヒーが飲めるまでは長そうだと、期待半分にしておくことにした。