女嫌いと男性恐怖症
部屋にガリガリという音と、ほろ苦い芳しい匂いが漂う。
あのカフェのゆっくりとした時間が、ここにも流れているような気分になった。
ゆっくりと淹れるコーヒーに、ただただ穏やかな時間が流れていた。
コトッと晶の前に、コーヒーが置かれた。
香りを楽しむと、口をつける。
「あぁ。うまいな」
晶の感想に、ホッとした嬉しそうな表情を浮かべると、遥もマグカップを手にしていた。
「今日は飲んでも、眠れそうなのか? もう、あんなの勘弁だからな」
「大丈夫です。カフェオレですし」
そういう問題でもないだろ。
晶の気も知らない遥は「うわ〜おいしい」と、自画自賛していた。
「そういえば。すっかり忘れていました。アキの私服を、買ってませんね」
相変わらずのスーツ姿の晶は似合ってはいるし、スーツでコーヒーを飲む姿は絵になるほどだったのだが、堅苦しいことこの上なかった。
「まぁな。もう少し慣れてからでいいんじゃないか? 夏休みの宿題は、最後まで残すタイプだ」
「え? なんのことですか?」
そういえば夏休みの話は、直樹としたんだった。
リラックスし過ぎて、そんな区別もつかないほどに、遥に気を許している自分に驚いた。