女嫌いと男性恐怖症
夕方になると、仕事も幾分片付いた。
「晩飯は俺が作ろう」と席を立つ。
キッチンでメニューを考えていると、インターホンが鳴った。
直樹か?
そういえば、今朝は来なかったな。
そんなことを思いながら確認すると、別の人が映っていた。
無視してしまいたかったが、それも出来なかった。
「はい」
晶のいつもと違う声色に、どうしたんだろうと遥は様子を気にしていた。
「沙織です。事務所も訪ねたんですけれど、お会いできなくて。これから、ご一緒できませんでしょうか」
今から。
ものすごく嫌だった。
それでも。
「分かった。すぐ行こう」
「良かったです。フィアンセのお誘いを断るはずないって、お義母さまが」
え。
耳を疑う言葉に、遥は固まっていた。
晶は、出かける準備を始めている。
「悪いが行ってくる。飯を食べたら帰る」
晶は、無機質な声を出した。
その晶には、また冷たい壁があるように思えた。
「あの。フィアンセって」
遥に背を向けたままの晶は、顔を歪ませて答える。
「許婚ってことだ」