女嫌いと男性恐怖症

 つらそうな遥にどうすることもできない晶は、気づいたら直樹に電話していたらしかった。
 その記憶さえ曖昧で、陽菜が遥を連れ出してくれた。

「今日は晶くんと、ホテルにでも泊まってね」

 そう言い残し、陽菜は自分の家に遥を連れ帰るようだった。

 残された男二人。
 晶はうなだれて、ソファに座っていた。

 こいつら、どうしたっていうんだ。

 さすがに直樹も、今の状況を面白がれるほど心、に血が通っていないわけではなかった。

 それでも、明るく晶に声をかける。

「ここにいても仕方ないだろ? 久々に飲みに行こうぜ。ホテルの部屋で飲んだっていい」

 無理矢理にマンションから引きずり出すと、泊まれそうなホテルを探した。

 結局、どこも空いてなくて、事務所に来ていた。
 応接セットのソファに、二人で腰をおろす。

「懐かしな。繁忙期には、よくここで寝泊まりしたもんだ」

 明るく言っても、晶からは無反応だった。

「まぁ飲めよ」とビールを渡す。

 無言のまま飲み始めた晶は、突然起こった出来事を、直樹にポツリポツリと説明し出した。

< 122 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop