女嫌いと男性恐怖症

「何がおかしいんだ」

 ご機嫌斜めでブスッとそれを眺めていると、目があった。

「いえ。確かにアキよりも、綺麗な女性なんていませんよね」

「だから、俺に女を形容する……」

 そこまで言って、自分で言ったことに気づく。

 ハンッそこまでしてハルに義理立てしたいなんて、やっぱり俺はどうかしてる。

「アキ、薄汚れてます。お風呂入った方がいいんじゃないですか?」

 昨日はグチャグチャのボロボロで、身なりなんて。
 だいたい、ボロ雑巾だったお前が言うなよ。

 悪態をつきたいのを抑え、立ち上がった。

「風呂でも入るか」

「沸かしてあります。入った方がいいなって思って」

 こいつ。
 いい嫁さんになるだろうな、なんて馬鹿げた思いをかき消した。

「あぁ。助かる。いつもありがとな」

 言ったことに恥ずかしくなると、遥の顔を見ないままお風呂へ向かった。

 残された遥は「え…」と言ったまま、顔を赤らめていた。

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