女嫌いと男性恐怖症

 とろっとした卵の上にかかったデミグラスソースが、なんとも食欲をそそる盛り付けだった。

 一人「いただきます」と食べ始めると遥は目を丸くして急いで「いただきます」とスプーンを持った。

 そうさ。ここは俺の家だ。
 こいつに、気を遣うことなんてない。
 忘れるところだった。

「あれ。ご飯が赤くない」

 遥のつぶやきに、聞こえないフリをする。
 チキンライスのことを言っているようだった。

「あれ。美味しい。美味しいです!」

 つぶやきは報告に変わると、嬉しそうにスプーンですくって口に運んでいる。

 これだから嫌なんだ。
 チキンライスが苦手で、バターライスは好きなんて。

 どこまで似た者同士なんだ。

「アキは料理が上手ですね。それに言わなくても、私の好きそうなのを作ってくれます」

 何を、都合のいいことを言ってるんだ。
 オムライスは、好物じゃなかっただろうが。

 心の中で悪態をついても、思わぬ褒め言葉に気分が良かった。

< 136 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop