女嫌いと男性恐怖症
とろっとした卵の上にかかったデミグラスソースが、なんとも食欲をそそる盛り付けだった。
一人「いただきます」と食べ始めると遥は目を丸くして急いで「いただきます」とスプーンを持った。
そうさ。ここは俺の家だ。
こいつに、気を遣うことなんてない。
忘れるところだった。
「あれ。ご飯が赤くない」
遥のつぶやきに、聞こえないフリをする。
チキンライスのことを言っているようだった。
「あれ。美味しい。美味しいです!」
つぶやきは報告に変わると、嬉しそうにスプーンですくって口に運んでいる。
これだから嫌なんだ。
チキンライスが苦手で、バターライスは好きなんて。
どこまで似た者同士なんだ。
「アキは料理が上手ですね。それに言わなくても、私の好きそうなのを作ってくれます」
何を、都合のいいことを言ってるんだ。
オムライスは、好物じゃなかっただろうが。
心の中で悪態をついても、思わぬ褒め言葉に気分が良かった。