女嫌いと男性恐怖症

 夜。眠れなかった。

 散々昼に寝たせいだけではない。

 目を閉じると、蔑んだ瞳の遥が頭に浮かんだ。
 さきほどから、何度ココアを飲んでも眠れそうになかった。

 逆に、遥はあんなことがあっても、世間を欺く要員として任命されたことで、ここにいる理由ができた。
 そのお陰か、不安がることがなくなったようだった。

 何度目かのキッチンにいると、遥が眠い目をこすりながら起きてきた。

「悪いな。起こしちまったか」

「眠れないんですか?」

「いや。そんなんじゃない。大丈夫だ。お前は寝た方がいい」

 心配そうな視線を向けて近くに来る遥に、晶は一歩距離を取る。
 また一歩近づく遥に、また一歩距離を取った。

 見上げた顔に「どうして?」と書いてあるようだった。
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