女嫌いと男性恐怖症

「また過呼吸や蕁麻疹が出たら面倒だ。俺に必要以上に近づくな」

「アキは、大丈夫です」

 大丈夫じゃなかっただろうが。

 あの騒ぎを、こいつの中では無かったことになってるのか。

 でも、俺は。

「俺は女嫌いだ。忘れたのか。ハルも所詮は女だろ? だから必要以上、に近づいてくれるな」

 この言葉には、遥もグッとした顔をすると、何も言わないまま部屋に戻ってしまった。

 その姿に、少し胸が痛かった。
 しかし。

「俺はあの眼差しを忘れられるほど、図太くないんだよ」

 そう自分にも言い聞かせるように、つぶやいた。

 きっともう一度、あんな眼差しを向けられたら、立ち直れないだろう。
 あんなチビが怖いだなんて、笑ってしまう。

「これは正当防衛だ」

 そうつぶやいて、眠れない体をソファに沈めた。
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