女嫌いと男性恐怖症
「いいか。俺のことは、晶"さん"なんて言うな。アキでいい。俺んとこ住むなら、あたしはやめろ」
俺は、女は嫌いなんだ。
あたしなんて、毛虫が這うようにゾッとする。
そう思って、こいつも男が嫌なはずだと思い出す。
俺のことは、俺でいいのか。
いやいや。俺の家に住まわせてやるんだ。
俺は、俺の好きにしていいはずだ。
「あの、アキさんは」
「だ、か、ら。さん付けはやめろ。アキでいい。俺もそうだな。お前じゃなんだから、ハルって呼ぶ。で、お前は自分のことを、僕と言えるなら住まわせてやってもいい」
そうさ。
小学生のクソガキと一緒に住むと思えば、住めないこともない。
そう思ったら、別に大したことない気がしてきた。
「いいんですか? だって、あた、僕は女で」
「それはまぁ、お互い様だ。無理ならやめたらいい」
遥はうつむいて、少しの間黙っていた。
しかしまたすぐに、真っ直ぐな瞳を晶に向けた。
「いえ。お願いします」
こんな感じで、奇妙な同居生活が始まった。