女嫌いと男性恐怖症

「自分で取ればいいじゃないですか」

 ツンっとして言う遥に、不機嫌な声が出る。

「自分じゃ、取れないから頼んでるんだろ」

 よりによって複雑に編み込まれていたり、どうなっているのか晶には分からない。

 いっそ髪の毛ごと、切ってしまいたいほどだった。

「私は、アキに近づくなって言われてます」

 こいつ。

「なんで、そうなるんだ。いいから取ってくれ」

「なんでって、仕返しです」

「仕返しって」

「近づくなって」

 やっぱりやったのは、ハルなんじゃないか!

 クソッ。何が仕返しだ。

 文句を言ってやりたかったが、遥の機嫌を損ねて、この頭まま過ごすわけにはいかない。

 グッと堪えると、嫌々口を開く。

「昨日は言い過ぎた。悪かった。だから取ってくれ」

 遥はしぶしぶ晶の方へ歩み寄って「座ってください」と、ダイニングの椅子を勧めた。

 夜にここまでされて気づかない自分にも腹立たしいが、ハルも何故こんなことをするんだ。

 不思議で仕方なかった。
 仕返しってなんだよ。

 ったく、言い方はきつかったかもしれないが、近づかないのはお互いのためでもあるはずだ。
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