女嫌いと男性恐怖症
「ごめんなさい。ちょっといたずらが、過ぎちゃって。こんなに近づいたら、怒られちゃう」
離れようとする遥を、支え直す。
「バカ。今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ。過呼吸と蕁麻疹の他にも何かあるのか? ああ、俺が原因なら、一刻も早く離れないといけなかったか!」
慌てる晶に、遥は力なく首を振る。
「違います。ちょっと、貧血で」
貧血。
それにしたって。
「あとお腹も、痛くて。大丈夫です。寝てたら、きっと治ります」
寝てたらって、かなり辛そうだ。
「病院に行こう。なんでもないならなんでもないで、良かったで終わる。腹が痛いなら盲腸かなんかって、場合もあるだろ」
「病院はちょっと。大丈夫ですから」
遠慮しているのか、病院が怖いのか。
前も病院の話をした時に、そんな素振りだった。
「やっぱり病院に行こう。俺もついていく。女医も頼んでやる」
浮かない顔の遥は「じゃ陽菜さんに連絡を」と要望を口にした。
「直樹の奥さんは、医者じゃないんだ。病院の方が、いいんじゃないのか?」
晶の言葉に、遥はとうとう苛立ったような声をあげた。
「大丈夫ですってば。女の子の……ですから」
女の子の……。女の。
ハッと気づいた晶は目を見開いて、思わず支えていた手を離しそうになった。